研究系及び研究施設の現状 243
安全衛生管理室
戸 村 正 章(助手) (2004 年 6 月 1 日着任)
A -1) 専門領域:有機化学、構造有機化学、有機固体化学
A -2) 研究課題:
a) 分子間の弱い相互作用による分子配列制御と機能性分子集合体の構築 b) 新しいドナーおよびアクセプター分子の合成
A -3) 研究活動の概略と主な成果
a) クロラニル酸と種々の窒素配位子を用いて,B ifurcate な水素結合系超分子シントンを開発し,その分子配列制御能 を検討した。その結果,この超分子シントンにより,無限の一次元テープ構造を様々な分子系において構築できる ことを明らかにした。この系では,分子のスタッキングは,ほとんどの場合,分離積層型であり,分子配列がある 程度予測可能であることを示唆している。以上のようなコンセプトに基づき,拡張π電子系内に,水素結合・ヘテ ロ原子間相互作用・C–H···p相互作用・立体障害などの分子間の弱い相互作用を導入し,一次元テープ構造をベー
スとしつつ,最終的には格子状有機超分子構造体を設計・構築することを検討している。
b) 1,2,5- チアジアゾール,1,3- ジチオール,チオフェン,ピリジン,ピラジン,チアゾール,オキサジアゾールなどの ヘテロ環を有する新しいドナーおよびアクセプター分子を合成・開発した。これらの中には,ヘテロ原子間の相互 作用により特異な分子集合体を形成するものや,高伝導性の電荷移動錯体およびラジカルイオン塩の成分分子とな りうるものがあった。さらに,有機分子デバイスへの応用を目的として,チアゾールやオキサジアゾールをもつ分 子に関してはその F E T特性,ピリジンをもつイリジウム錯体に関してはその E L特性について検討し,いずれも興 味ある知見を得た。
B -1) 学術論文
K. ONO, M. JOHO, K. SAITO, M. TOMURA, Y. MATSUSHITA, S. NAKA, H. OKADA and H. ONNAGAWA, “Synthesis and Electroluminescence Properties of fac-Tris(2-phenylpridine)iridium Derivatives Containing Hole-Accepting Moieties,” Eur. J. Inorg. Chem. 3676–3683 (2006).
B -7) 学会および社会的活動 学協会役員、委員
日本化学会コンピューター統括委員会 CSJ -W eb 統括的管理運営委員会委員 (2001-2002). 日本化学会広報委員会ホームページ管理委員会委員 (2003- ).
C ) 研究活動の課題と展望
有機固体における電気伝導性,磁性,光学的非線形性などの物性の発現には,その分子固有の特質のみならず,集合体内 でどのように分子が配列しているかということが大いに関与している。そのため,このような機能性物質の開発には分子配列
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および結晶構造の制御,つまり,分子集合体設計ということが極めて重要である。しかしながら,現状では,簡単な有機分 子の結晶構造予測さえ満足には成し遂げられていない。このことは,逆に言えば,拡張p電子系内に,水素結合などの分子 間の弱い相互作用を導入し,種々の分子集合体を設計・構築するという方法論には,無限の可能性が秘められているという ことを示している。今後は特に,水素結合だけではなく,ヘテロ原子間相互作用・C–H···p相互作用・立体障害といった比較 的新しいツールによる分子集合体設計に取り組みたい。また,この分野の研究の発展には,新規化合物の開発が極めて重要 であるので,「新しいドナーおよびアクセプター分子の合成」の研究課題も続行する。さらに,以上のような研究活動と安全衛 生管理業務の効率的な両立を常に念頭に置いている。